リンクウェルのプロダクトデザインの現在地
2024年1月で創業6年を迎えたLinc’well。
2018年の創業から、コロナ禍を経て現在に至るまで、「テクノロジーを通じて、医療を一歩前へ」というミッションの実現に向かって、事業の拡大、組織化が進んでいます。
この6年という歳月の中で、急成長を続けているLinc’wellにとって、デザインとは表面的な美しさを形作るのではなく、患者課題を解決するための体験価値を具現化する重要な機能であり、デザイナーはまさにその担い手。
そこで今回は執行役員プロダクト統括の原と、プロダクトデザインチームをリードする小玉が、Linc’wellのプロダクトデザインを通じて生み出したい価値について語ります。
デザインチーム発足の背景
ー まずはじめに、Linc’wellにおける「プロダクトデザイン」チームの役割や業務内容について教えてください。
小玉:Linc’wellは、医療業界のデジタル化を推進することで、従来の医療体験を変革し、患者さんと医療従事者双方にとって、快適な医療プラットフォームづくりを目指しています。デジタル化により改善できる課題は多く、クリニックに提供しているLinc’wellのオンライン診療システム提供サービスでは、医療従事者とビジネスチーム、開発チームの相互協力により、患者さんの負担を軽減し、より健康的で豊かな生活を支えるという一つの目標に向かって、日々業務に取り組んでいます。
現状のプロダクトデザイナーは、各プロダクトの開発に注力しつつ、アクセシビリティ・ユーザビリティの改善など、横断的な課題解決にも取り組んでいます。
ー このようなプロダクトデザイナーの機能、役割ができるまで、どのような変容があったのでしょうか?
小玉:私が入社した2022年の時点では、デザインチームそのものがなく、デザイナーは開発部に所属していました。それから同年11月、デジタルプロダクトのディレクションを担うプロダクト部の発足に合わせてデザインチームが設立されたというのが簡単な経緯です。
原:創業初期から2022年までは、デザイナーは特定の担当分野を持たない領域横断のチームになっていました。事業の成長スピードが早いこともあり、連続性のないデザインニーズの変化に柔軟に対応するために、特定の役割を持たず社内外からのデザイン要求に応えていたというのもあります。
当時はこのような体制であることのメリットもありましたが、一方で事業フェーズの変化や外部環境要因の変化も相まって、プロダクトにおける「より良い体験価値の提供」とそれを実現するためのプロダクトデザイン機能の強化が急務であると強く感じるようになりました。
そこで2023年3月に、デザインチームを「プロダクトの体験価値」をデザインする「プロダクトデザインチーム」、サービスや企業としての価値を内外に「伝える」デザインを行うコミュニケーションデザインチームに分割しました。
小玉:数年の間に事業が拡大し、それに伴って扱うサービスの領域が多様になったことも変化の要因です。オンライン診療システム提供サービスをはじめ、アプリ開発やヘルスケアECなど、専門性が必要な領域が増えましたね。その結果、デザイナーが局地的な対応に終始することが多くなり、組織体制の変化が必要となりました。
ー チームを分けることで生まれた利点はありますか?
小玉:事業領域ごとにデザイナーの担当を分けたことで、プロダクトデザインにおいては、プロダクトのUI/UXの一貫性を担保しやすくなったと感じています。また、ドメインの専門性を高めやすいため、デザイナーが品質に対して集中できる環境を提供しやすいというメリットも生まれました。
自律的にデザイン課題を解決できる推進力を持ったチームへ
ー デザインの価値を高めるために、どんな取り組みをされたのでしょうか?
小玉:私が入社した当初は、一人のデザイナーが複数のプロダクトを兼務している状態でした。そのためプロダクト開発へのコミットが弱く、組織の拡大やプロダクトの進化にデザイナーが十分に対応できていないと感じることもありました。
また、開発全体を通じて、横断的かつ投資効果の見えにくい課題を誰が扱えばいいのか?という課題がありました。そこで主に属人化の高い制作プロセスやデザインシステムの整備など、それらのデザイン課題に主体的に取り組める体制を構築することから始めました。
ー 元々の目的であった「体験価値を高めるデザイン」を行うためには、どんなことに取り組んだのでしょうか?
小玉:まず最初に取り組んだのは採用です。プロダクト開発に必要な経験を備えているだけではなく、最終的にユーザーにどういった価値を提供したいか理想を持ちながら、当事者意識高く業務を推進していくマインドが必要で、その点についても重視しました。
その結果「デザインの力でプロダクトをよくしていきたい」「ユーザーに良い体験を届けたい」という強い思いと当事者意識を持つ仲間が参画してくれて、育休から復帰したメンバーも含めてプロダクトデザインチーム全体で5人までチームを大きくすることができました。
原:志を共に切磋できる仲間が増えてくれるのは本当に心強いですよね。
小玉:そうですね。チームとしてもちゃんと「我々はプロダクトデザインチームである」と言える規模にすることができました。
ー 採用以外にも、デザイン・デザイナーの価値を会社全体として高めるために、社内に目を向けて実施した取り組みはありますか?
原:これまでの横断チームの弊害としては、ある程度要求が固まった段階でデザイナーが参画してデザインタスクをこなすというような流れが当たり前化していた部分もあったなと感じています。
その中で非デザイナーであるビジネスチームや医師から「デザイナーをいつどんな形で巻き込めば、サービスとしてのより良いアウトカム(=価値)を得られるのかわからない」という声も上がっていました。そこで、プロダクトの価値開発プロセスの中で、デザイナーが何にどう関わっていくべきなのか?という議論をよく小玉さんとしました。
小玉:採用以外では、マネジメントや他の職種から見たデザイナーの課題や要望を正確に把握することからはじめました。 プロダクトデザイナーがバリューを発揮するためには、第一に、ドメインやプロダクトの理解を深めることが必要です。またユーザーの課題を発見し、デザイン思考で解決に導くデザイナーのアプローチデザイン的な思考はスタートアップとの相性は本来いいはずですが、「デザインが大事なのは当然」というスタンスだとなかなかうまくいきません。
事業的に重要なことや開発上の制約などを、デザイナー自身が積極的に取りに行くことも重要です。また、非デザイナー職に対しては「目的達成のために、なぜこのクリエイティブが良いのか」を、文脈と背景を踏まえた上で丁寧に説明し、理解してもらう必要があります。 他の職種と積極的にコミュニケーションをとっていくなど、今後さらに努力が必要な部分もあります。
原:小玉さんのあるべき姿から目標をぶらさない所とそこに一歩でも近づくために日々手を動かし人を動かしを粘り強くやり続ける胆力は本当にすごいです。
ー ここまで会社としてのデザインの価値についてお話しいただきましたが、デザイナー、プロダクトデザインチームとしての価値は、どういった点に重きを置いているのでしょうか?
小玉:意識したのは、デザイナーの実行力を高めるという点です。デザイナーの制作効率とデリバリー課題を改善するために、プロダクトデザインチームが発足してすぐに、デザイン生産基盤の改善に着手しました。
はじめに、最新のデザインがどこにあるか分からない、といった状態を解消するために、時間をかけてデザインの全体像を把握するところに時間を使い、膨大なデザインファイルを整理しながら、本番環境との紐付けを行いました。
次に、制作プロセスの属人性を解消し、効率的に他の職種と連携するために、デザイナーが依頼を受け取ってからリリースするまでのワークフローを刷新し、ステータス管理を明確にしました。
デザインの一貫性と拡張性を向上するための対策として、画面ごとにレイアウトが異なり、同じ機能であってもUIの見た目や操作方法が違う、といった状態を、デザイナー共同で、再利用が可能で再学習の必要がない状態に、現在進行形で少しずつアップデートしながら改善しています。
Linc’wellのデザイナーは、単線的な開発プロセスを取らず、他の職種とアダプティブに連携します。アイディアをデザインとして視覚化するタイミングで、要件の詰めきれていない箇所や、より適切なHowを発見した際には、必ず代替案を提示します。他の職種が持ち得ていない発想力や視覚化能力で、各人が有する能力を補完し合いながら施策を構築することを心がけています。
デザイナーとしてのスキルアップの機会の提供
ー チームメンバーが増える中でデザイナー同士の繋がりや、デザイナーとしてのスキルアップの機会を作るためにやっていることはありますか?
小玉:メンバーのスキル向上を目的とした勉強会を定期的に開催しています。勉強会ではUI/UXにまつわる話に限らず、ブランディングに関する議題も扱っています。ユーザーが触れるもののデザイン価値が低いと、サービスとしての体験価値も損ねてしまいます。 設計とデザイン両方の質を高める取り組みを実施しています。
そのほかにも、ランチ会などを企画してリモートで働くメンバーも多い環境下でもお互いに顔が見える存在になれるようにしていたり、最近始めた取り組みとして「デザイン成果物のクロスレビュー」があります。
原:クロスレビューの具体的な内容について教えてほしいです。
小玉:担当しているプロダクトが違うデザイナー同士で、その時々の課題やアウトプットを持ち寄り、チーム全体で課題解決の議論をする場としてクロスレビューを設けました。品質の向上と各プロダクトがユーザーへの価値でどのようなアプローチを取っているのかをキャッチアップすることが目的です。
原:Linc’wellでは誰もが担当業務の責任者として上下なく尊重されるという文化があると思いますが、レビューにおいてフィードバックをどのように取り扱うようにしていますか?複数人からフィードバックすることで相反する方針が示されるようなことも起こり得ると思いますが。
小玉:クロスレビューの場では、何をどう改善するかの意思決定はしません。 自分より経験豊富なデザイナーからのアドバイスであったとしても、最終的に取り入れるかどうかはデザイナー本人が決めることを基本方針として実施しています。 自分の抱いている課題感と他人の意見を付き合わせながら、あくまで課題突破の糸口は自身で見つけていくことを期待しています。
医療業界におけるデザインの役割
原:デザイナーの小玉さんから見てLinc’wellはどんな会社に見えますか?
小玉:組織や事業の規模が大きくなった現在でも、いい意味でスタートアップのスピリットを維持していると思います。社内の風通しを良くする風土が根付いており、ボトムアップでの業務改革が活発ですね。
ー 医療業界はステークホルダーが多く、デザインのハードルが高いイメージを持っている人が多いと思いますが、Linc’wellならではのやりがいを教えてもらえますか?
小玉:Linc’wellは、患者側に留まらず、医療従事者側の課題解決も行なっています。すべての社員が「デジタル化によって医療の現場課題を解決できる」という信念に基づいて業務を推進しています。 Linc’wellのデザイナーは、患者さんと医療従事者、双方の声を聞きながら、企画構想段階から他の職種と連携をとり、課題解決のインターフェースを制作しています。
「Patients First」というバリューに基づき、本当の意味でユーザーにとって利便性の高いものを追求しようとする姿勢が強いのが特徴ですね。
見た目が綺麗であるかだけではなく「本質的にどのような価値を世の中に届けたいのか」を自分の中で描けていることが重要です。Linc’wellのデザイナーには、世の中で標準化されているものや指定された仕様をそのまま採用せず、実際の出来事に基づいて課題を解決しようとするマインドが根付いています。
原:小玉さんがいうように、デザインをする上で見た目だけではなく、最終的にどういった体験・感情を与えたいのか?デザインを生み出すプロセスや成果物よりも、それによってもたらされるアウトカム(=価値)を重視していると感じます。プロダクトを使ってもらうために、よりナチュラルに習慣化してもらうことや、ユーザビリティまで気を配り、使う「安心」「心地よさ」「新しい発見」をユーザーに体験してもらう、という発想を大事にしており、私自身も大事にしたいと思っています。
小玉:あとは医療現場との距離の近さもLinc’wellの独自性ですよね。toC、toBの両面で一次情報に日常的に触れながら、明確な目的に基づいて論理的にデザインができるところは、そう多くないと思います。
スタンダードを高められる組織へ
原:これまでLinc’wellにおけるプロダクトデザイン組織や今後取り組みたいテーマについて話してきましたが、この辺りを掲げている会社というのは世の中的に多くあると思っています。その中で何が他社と違うのか?を考えると最終的には「やり切り力」だと思っていて、やろうと標榜を掲げるだけでなく、会社として個々人として当事者意識を持ってやり切る組織であるということは胸を張って言えると思います。Linc’wellにはやり切りたい人が集まっていてやり切れる環境もあると。
小玉:そうですね。世の中的には、デザイナーの役職がはっきりしており、関わる領域が制限されている会社がまだ多いと思いますが、Linc’wellでは、デザイナーはプロダクトの体験設計から関わり、立ち上げから運用まで職域を超えて他の職能とコミュニケーションし、品質に向き合える環境があります。
原:皆がコトに向かって自律的に動きながらも日々有機的に連携して叡智を結集していくようなカルチャーがありますよね。
ー 今後一緒に働きたいデザイナー像について聞かせてください。
小玉:プロダクト開発と横断的な課題解決を兼任で行なっているため、リソースの不足がひとつの壁になっています。専門性をさらに高めないといけないという課題もあります。
Linc’wellのデザイン組織はまだ成長段階です。デザインの価値を最大化するために、今後も組織の形をアップデートしていきます。 特に今は体験価値向上のフェーズで、より一貫したデザインとUXを提供できるよう注力していきます。 変化が多い市場で、プロセスに固執せず、最高の体験を届けることにこだわり抜く。 オンラインとオフラインを繋げ、今よりもっと経験の機会と幅を拡張したいというデザイナーは、Linc’wellに向いていると思います。
ー 今後はどのようなことにチャレンジしていくのでしょうか?
小玉:今後も引き続きプロダクト開発に注力しながら、横断的な課題解決に取り組みます。本質的に必要なことは、組織を完成させることではなく、事業や会社の状況に合わせながら、柔軟に変化させていくことだと考えています。 良いプロダクト・サービスを作るために、デザイナーにできることや経験を拡張させながら、より価値を発揮できるデザイン組織に変化させていきたいですね。
デザインの力で未来を創造し、世の中を変えていきたいという強い想いを持っているデザイナーを、ぜひお待ちしています。
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